戸田レガッタのレース回顧について

2020年から国内で新型コロナウイルスの感染拡大が広がり、ボート競技も多くの大会中止を余儀なくされました。また大学からの活動制限や勧誘行事等の機会も失われ、当部にとっても非常に厳しい現状に立たされています。

上級生は皆、引退、卒業となり、現在は新2年生となった鏑木遥太1名が唯一の部員として活動してくれています。昨夏、コロナ禍で活動もままならないこうした状況の最中、入部を決断してくれ、そこから私と二人三脚で練習を重ねてきました。秋頃には二人で漕ぐことが可能となり、少しずつ強度をあげ、年明けからはUTを中心とした練習で春休み期間中には平日の乗艇機会も増やして、今季の開幕戦となるお花見レガッタでのデビューを目指しました。ですが、私自身がレース当週に体調を崩してしまい、残念ながら棄権という選択をさせることになりました。

私自身も昨季はレース復帰を一時は目指していたものの原因不明の呼吸苦に悩まされ、追い込めば追い込むほど症状は悪化し、色々と検査を繰り返した結果、運動誘発性喘息であることが判明し、その後は気管支喘息を併発し、今はステロイドの吸入薬でコントロールをしています。スポーツ選手の多くがこの喘息と向き合いながら競技を続けていると知り、自身も克服できないかと様々なな記事を読み返し、今ではなんとか通常の練習を行う分には支障がない程度にまで安定しています。

こうした状況で迎えた今回の戸田レガッタは鏑木自身のデビュー戦という位置付けながら、私自身にも大きな意味を持つレースでした。レースとなれば当然横には相手が居ますが、我々はまず今の現状を知ること、そしてこの仕上がりで4分を切ること、これが大きな目標でした。春先もUT中心のメニューは変えず、あくまで低レートで一本しっかりと漕いで艇を進めることに重点を置いてきましたが、ちょうどお花見レガッタを目指すと決めた3月頃から時折、インターバルも取り入れて26程度は安定して漕げることも確認できていたためレースレートもこれに定めていました。

あとは当日のコンディションだけが不安材料でしたが、その不安は的中し、予選レースでは苦手とする強い向かい風に苦戦を強いられました。大学クルーはさすがのスタートダッシュで開始数秒で視界から消えたものの真横には1艇が並ぶ展開となったため集中は切れることなく500mをほぼ横並びで通過することができました。この時点でもリズムは崩れず体力的にもまだ余裕があったように見受けられましたが、無理はせずキープしたまま残り100mほどだけスパートを仕掛け、相手の腹切りもあってなんとか4位でゴール。タイムも当然ながら思ったように伸びない結果とはなりましたが、 前後半ラップもほぼ変わらず、想定したペース配分であったことやコンスタントを28でキープできたことは一つの収穫でした。翌日はタイム差のない組み合わせでもあり、午前中でコンディションも改善されることに4分を切れるだろうという手応えと期待もありました。

迎えた翌日。想像以上の順風もこれならばと昨日のペース配分からスパートラスト200mをやってみようと二人で相談して挑みました。スタートダッシュを決めて250m付近で大学3クルーがほぼ横並びの展開。ここからコンスタントを落としつつも『長く、強く、1本で艇を進めることだけ意識して』をそのまま体現し、1艇身ほどの圏内でスパートタイミングをはかり、宣言通りラスト200mからの2枚上げ。残り100mで立教大学Cを競り落とし、トップの成城大学まで視界に捉えますが、半艇身ほど届かずゴールを切りました。とは言え、思った以上のレース展開やほぼ落とすことなくコンスタントも30オーバーができていることはびっくりしたものです。何より昨日とは打って変わって、出し切りの全力1000mを漕ぎ切ることができ、初レースとしては十分な内容であったと思います。レースで得られるものは大きい、これを掲げて想像以上の結果に次なる進化と成長の布石になる二日間であったのではないでしょうか。

私自身も二日目のローアウトで陸では昨年発症した喘息の発作で一時は身の危険を感じたほどですが、ある意味限界を知ることもできました。これからの課題がより鮮明になったこともあり、更なるレース経験を重ねて秋には目標とする新人戦にいいかたちで臨めればと思います。

我々にとってはここがまだスタート地点です。今後、新入部員を迎え、個人だけでなく、部としての成長、発展をまた目指していかなければなりません。多くの方に期待していただき、支援いただきながらも結果として決して満足いただけるものでないことは重々承知しています。こうした逆境であることを言い訳にするつもりはありません。それでも数年の監督業で行き着いた答えは部員がいること、部として存続すること、これが目標ではないことに気づきました。ボートが好きで、勝ちたい、この環境でやりたいと思える学生たちを自らが育てていくことが今の自分の使命だと思います。

勝ち負けは結果として重要ではありません。勝つために努力を重ねること、そこに至るまでの過程こそが4年間という学生生活の中でも特に大きな意味を持ちつのではないでしょうか。そのためには勝ちたい、勝つために、こうした勝利というものを目標に掲げ、そこを目指して過ごすことにこそ本当の意味があるのではないかと思います。勝ちたいと思える部員らと共にこの部を作っていくことにこそ、自分が目指すべき部の理想の姿があるのだと。様々な課題や問題が待ち受けていますが、一歩ずつ乗り越えて行こうと思います。今、この部を預かって第1、第2フェーズが過ぎました。今この考えに至り、やろうとしていることこそが私の中での第3のフェーズです。しばらくは我慢も必要かもしれませんが、今までと違ったかたちの結果もあらわしていくつもりです。今後ともご声援いただきますよう、よろしくお願い申し上げます。

2021年5月4日
青山学院大学ボート部
監督 須田 祐樹